墨荘堂ブログ

西洋医学全般のセカンドオピニオンとして立脚する「和方鍼灸」を追求する関墨荘堂鍼灸治療院のブログです。
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和法鍼灸 関 墨荘堂
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『難経集注』の不思議

何度かお知らせしている、日本伝統鍼灸学会の創立40周年記念大会で記念品として出版する『難経集注』は、江戸時代に出版された本ですが、なぜか『難経』の底本となっている本です。


江戸時代に出版された本が、中国医学古典の底本になるなんて不思議ですが、書誌学的にはとってもおもしろい理由があるのです。


そもそも『難経』は昔の人達にとっても内容が難しかったらしく、他の古典医書より早くに注解書が出来ていました。最も古い注は三国呉の太医令呂広の注本で、『素問』『霊枢』の注本でさえも出来るのはもっと後のことです。


『難経集注』の正式名称は『王翰林集註黄帝八十一難経』というのですが、呂広の後も唐の楊玄操、宋 の丁徳用・虞庶・楊康侯らの注文を収集して編纂したわけです。こういう便利な本が出版されると、当然最初の呂広注本などは使い勝手が悪いため出版されなくなります。


呂広注本の内容は全て『難経集注』に含まれていると考えられますが、無くなってしまうと比べることが出来ないので、本当の呂広注本の内容はわかりません。


また、『難経集注』が便利だった為に、北宋以前の他の注解書はすべてなくなってしまい、だんだんと『難経集注』の影響力が増して行きます。


こうして時代が下って行くといつの頃か、『難経集注』でさえ、字の間違いが少ない系列が中国には無くなってしまい、誤字脱字の多い系列の本しかなくなってしまいます。


ここで話は日本に移ります。


たまたま日本では字の間違いが少ない系列が出版されていて、それが今回記念出版される「慶安本」です。「慶安本」自体も刊行後、版木が火事で失われてしまうために、少部数しか残らないということになってしまいます。


もちろん単行の注解書であれば、宋代の注解や、『難経本義』など「慶安本」より古いものはいくつか存在しますが、『難経集注』としては「慶安本」が最も良い底本となってしまうのです。


評議員の先生からは『難経本義』も一緒に出しては?というご意見を頂いたのですが、今回は実現しませんでした。私も本音は出して欲しかったのですが…。


ざっくりと「慶安本」の意義を書いてきましたが、大会中が通常価格より安く買えます(会員なら最も安く買えます)ので、購入を検討されている方は、ぜひ大会開催中(10/27〜28)に会場でお求め下さい。

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